知的財産権と印刷物
東京オリンピックのエンブレム騒動では、デザインの酷似が指摘され再公募となりました。
制作者は不名誉なパクリ呼ばわりされ、発注者側は多大な無駄を被りました。
デザーナー職そのものの資質が疑われることになりました。
印刷物の制作には、権利や法律が関わっています。
それらに抵触すると訴訟や損害が発生する場合があります。
知的財産権 | ●著作権 | |
●特許権 ●実用新案権 ●意匠権 ●商標権 |
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その他印刷物に関わる権利、法律 | ●肖像権 ●不正競争防止法 |
[著作権]
財産権(知的財産権)として小説、音楽、絵画、彫刻、写真などの著作者に対して、創作の時点で自動的に発生し、複製、上演、放送、展示、翻訳等について占有する権利です。この権利が侵害された場合の救済罰則は損害倍賞と差止請求と罰金となっており、一般の著作物の場合、権利期間は著作者の死後50年まで。
著作権フリーを謳った画像やイラストなどの素材データがインターネット上に出回っていますが、中には商用利用を許諾しないライセンス(クリエイティブ・コモンズ)のものもありますので注意が必要です。
クリエイティブ・コモンズ
「自分でつくったものは自分のもの。」第三者が勝手に使ったり、改造したり、配布したりしてはいけないというのが著作権。
それとは逆に、たとえば公園や道路は公有(パブリック)です。許可を取らなくても自由に利活用できるものです。
クリエティブ・コモンズ(CC)は著作権保護とパブリックドメインの間の領域で、「作者の名前さえ表示すれば自由に使ってください。」というように作者が自らライセンスを設定します。著作権放棄ではありません。
[特許権、実用新案権]
特許権(権利期間:出願から20年)は従来にない優れた技術的アイデア・発明を保護するもの。特許庁での審査を経た登録により発生します。実用新案(権利期間;出願から10年)は無審査で登録により発生。保護されたものを製造、使用、譲渡、貸与、輸入等する独占権となっています。権利が侵害された場合の救済罰則は損害倍賞と差止請求と罰金です。
印刷技術、紙加工などにも特許権で保護されている場合があります。圧着ハガキ、スクラッチカードなど。
[商標権]
商品、サービスの名称・マークの保護。特許庁での審査を経た登録により発生。名称・マークを使用する独占的な権利です。権利が侵害された場合の救済罰則は損害倍賞と差止請求と罰金です。
[意匠権]
工業的生産過程経て反復生産される物品の形状・模様等のデザインを保護対象としています。特許庁での審査を経た登録により発生。保護されるデザインの物品を製造、使用、譲渡、貸与、輸入等をする独占権です。権利が侵害された場合の救済罰則は損害倍賞と差止請求と罰金です。
[肖像権]
「自分の肖像を自分の意思に反して写真に撮られたり、絵に描かれたりしない」権利。肖像権という権利は法律には明記されていません。一般人の人格的価値を保護するもので肖像プライバシー権とも呼ばれます。
[不正競争防止法]
知的財産を侵害するような競争行為を禁止するもで、公正な取引慣例を阻害するような不正競争を禁止する法律。不正競争行為者に対して差止請求、損害賠償請求、罰金があります。
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